技術経営系専門職大学院協議会

第二回シンポジウム [開催報告] #3

2006年12月18日開催

パネルディスカッション:MOT人材がもたらすイノベーション

パネル

モデレータ

MOT協議会会長 東京農工大学 大学院技術経営研究科長 古川 勇二 MOT協議会会長 東京農工大学 大学院技術経営研究科長 古川 勇二

パネリスト

日産自動車株式会社 副会長 伊佐山建志日産自動車株式会社 副会長 伊佐山建志
三菱電機株式会社 常務執行役 開発本部長 久間 和生三菱電機株式会社 常務執行役 開発本部長 久間 和生
東成エレクトロビーム株式会社 代表取締役社長 上野 保東成エレクトロビーム株式会社 代表取締役社長 上野 保
日本経済新聞社 編集委員 中村 雅美日本経済新聞社 編集委員 中村 雅美
株式会社国際戦略デザイン研究所 代表 林 志行株式会社国際戦略デザイン研究所 代表 林 志行

モデレータ・パネリストのご紹介

日産自動車株式会社 副会長 伊佐山建志

日産自動車株式会社 副会長 伊佐山建志

MOT人材への期待は企業経営者となり、成果を挙げることである。そのためには、子会社あるいは地域本社のトップとして経営を経験する事が必要である。かつては子会社へ行く事はコースから外れる事を意味したが、今は子会社において経営計画、人事、財務など経営トップが必要な事を体験し、そこで頭角を現したものが企業経営にあたる時代である。あわせてグローバルな視点での経営が重要で、正しい時代感を持ち、自他を客観的に評価し、結果を出すことが求められる。エンジニアは「技術」という世界共通のコミュニケーションツールを持っている。その優位性を自覚し、向上心と粘着力を身につける必要がある。「差異化」戦略を実践し、自社のUnique Sailing Point(USP)を構築することが競争に生き残る条件である。日本の強みをさらに強くする事が、日本のイノベーションに繋がる。西洋人は木を見るが、東洋人は森を見る。双方の良いとこ取りをし、シナージを実現していくために、「日本型MOT」に期待したい。

三菱電機株式会社 常務執行役 開発本部長 久間 和生

企業に与えられた課題は、世界に通用する製品を継続的に開発し、持続的成長を遂げる事である。わが国が勝てる分野に重点化し、産業/技術のロードマップを作り、イノベーションの連鎖を起こす人材が求められる。マーケットドリブン、マーケットインからマーケットクリエイテイブの時代になってきた。これからの経営には1.変動する価値観への適用力2.事業戦略・開発戦略・知財戦略の三位一体推進3.強力なリーダーシップ4.理念を共有する組織が求められる。R&Dのトップは経営センスが不可欠で、企業のMOT=MOT+MBAの考え方を持っている。三菱電機は、ビクトリー戦略(強い事業を圧倒的に強くする)とアドバンス戦略(強い事業を核にして事業を拡げていく)の両輪による成長を考えている。製品化には、事業本部との連携強化、製品開発のロードマップ、テーマの開発、テーマの実行、事業化のサイクルをまわしている。世界の一流の技術を持ち、その技術で企業を支えていくために、大学と連携してやっていく。

東成エレクトロビーム株式会社 代表取締役社長 上野 保

東成エレクトロビーム株式会社 代表取締役社長 上野 保

中小企業の代表として、「企業規模は小さくとも、イノベーティブであれば生き残れる。そのためには、中小企業は自分の技能(ノウハウ)を持ち、得意技術を持つことが必要で、それを担える人材を求めている。」ことをまず主張したい。ものづくりの開発スピードが飛躍的に速まった。これに対応するには、生き残りをかけた経営革新が必要で、生産の仕組みを改善し、企業間取引のスピードアップ、顧客ニーズの先取りが必要である。産業構造は、かつては大企業を中心として系列・下請企業を束ねていたが、今はモノづくりの特色を持つ中小企業が中核となって、大学・大企業・協力企業との間でネットワークを構築する図式に変わりつつある。その事例として東成エレクトロビーム㈱をコーディネート企業とするネットワークが紹介された。 そこで最も重要なことは人材の確保で、そのためにはまず魅力ある企業になること、そのために新しい技術に挑戦しつづけることと、常に向上する企業体質が条件となる。人材育成はMOTを活用する他に、中小企業大学校や中小企業技術経営大学校などを活用しているが、中小企業が抱える最も重要な課題は後継者問題である。

日本経済新聞社 編集委員 中村 雅美

日本経済新聞社 編集委員 中村 雅美

第3者から見たMOTについて意見を述べたい。経営資源といえば、これまでは「ヒト」「モノ」「カネ」だったが、今は経営の中に「技術」の観点がないとわからなくなってきている。大学の役割は研究と教育であるが、今後は「いい人材を育てることで社会還元を果たす」ことが強く求められる。MOT専門職大学院は社会還元の一環として、スクールとしての人材育成が役割となる。大学はこれまでは敷居が高かったが、社会還元を意識し、企業外知的集団として、企業とのタイアップを積極的に進めていく必要がある。それぞれの大学が画一化した教育内容ではなく、それぞれの特色をもっと色濃く出して、人材育成に取り組む必要がある。次代を担う研究者・技術者・経営者が必要で、それを俯瞰できる技術経営者の育成がMOT専門職大学院の使命である。

株式会社国際戦略デザイン研究所 代表 林 志行

株式会社国際戦略デザイン研究所 代表 林 志行

MOT大学院のイシュウは、1.MOTブランドの確立(MBAとの関係においてどのように差異を持ち日本型MOTを確立していくか?)2.MOTマネジメントの仕組み(潜在顧客を考え、顧客の利便性・満足度を向上)3.改革志向(何を変えたいか、イノベーションは何か?)である。MOTの戦略ツリーは「企業と大学院のWin-Winの関係」作ることで、そのためにはMOTのめざす方向に対するsimulationができており、質の向上が求められる。これからはMOT間の競争が激化し淘汰の時代に入っていく。そこではマネジメントの高度化とイノベーションのスピードが求められる。顧客は誰かによって、カスタマー(お客様は神様)、クライアント(ソリューションを提供)、ビジネスパートナー(Win-Winの関係)になる。MOTは企業のビジネスパートナーとして、企業の人材育成の新陳代謝をどう作り出すか? 大学院の企業要求への対応スピードアップが求められている。