MOT教育コア・カリキュラム案についてのパブリック・コメントと見解

技術経営系専門職大学院協議会(MOT協議会)
MOT教育コア・カリキュラム開発委員会

MOT 教育コア・カリキュラム開発委員会(以下、委員会と略記)において作成したMOT 教育コア・カリキュラム案を平成21 年11 月よりホームページ上などで公開し、パブリック・コメントを頂きました。積極的な評価と共に、教育を実施する際に注意すべき点や、継続的にカリキュラム内容の向上を図っていく場合の留意点など、多様な視点から有益なコメントを頂きました。以下では、コメントとそれに対する委員会の見解を記しております。

MOT教育コア・カリキュラムに寄せられたコメントとそれに対する見解

No.コメントコメントに対する見解
1MOTは技術をベースにした創造の段階から市場普及までをカバーするのであるとの観点からすると、示された内容は妥当。但し、創造性を重視する観点からすると、事業創造に関する項目(アントレプレナーシップ、事業開発論など)をもっと含めるべきではないか。(学識経験者A)起業や新事業創出は目指す成果の一つであり、重視している。ここで提示したのはそれらを実践する際に基盤となるミニマム・リクアイヤメントとしての知識であり、創造的な取組みそのものは総合領域で行うように配慮している。
2知識項目としては概ね妥当なものと思われる。大項目の立て方については種々異論もあり得るだろうが、重要なのは中項目以下の網羅性であり、チェックリスとしてのその有用性だとの考え方も成り立つ。その点ではかなり網羅性の高い体系になっているのではないかと考えられる。
小手先の経営技法の習得に留めない体系することが重要。
オペレーションズ・マネジメントが設定されているのは良いことだが、単純に製造業の生産管理に留めないように留意すべき。(学識経験者B)
指摘、留意点についてはその通りであると考えている。小手先の技法の習得に留めないために総合領域を設定している。オペレーションズ・マネジメントについては、製造業における狭義の生産管理より広い概念であることを意識してこのような名称にしている。
3イノベーション・マネジメントにおいて「イノベーションの収益化」の論点が取り上げられていないのは不満。収益化の代替的手段の一つは特許であり、知的財産マネジメントにおいては近年、特許化せずノウハウとして秘匿する戦略の意義が高まっているがその点も考慮されていない。(学識経験者B)指摘に対応するものとして、イノベーションは経済的価値の創出を伴うものであることを記載している。特許化せずにノウハウとして戦略的に活用することは施策として採り得る選択肢の一つで、このような戦略的取組みを検討するための前提としてここではミニマム・リクアイヤメントとしての観点から知的財産マネジメントに関して最小限理解しておくべきことを示している。
4本来はイノベーション・マネジメント、技術戦略、新製品開発、R&Dマネジメントはセットであるべき。(通信)それぞれが相互に強く関係しているのはその通りである。本文中にも記載したように、大・中項目は開講する科目名を表しているのではなく習得すべき内容の表示と理解を容易にするためのもので、教育に際しては項目の相互関係を考慮すべきと認識している。(コメントNo.5 参照)
5重複する可能性のある項目がある。違う人が同じ知識について違うように教えてしまう危険性を孕む。例えば技術戦略と経営戦略は重複を招きやすいが、それを避けるように整理して教育が実施されれば上手くまとまったものとなる。(民間教育機関)項目は科目名などを表しているのではなく習得すべき内容を表示しているので、例示の技術戦略と経営戦略では戦略の基盤に関しては部分的な重複もあり得る。それは既習した内容を土台にしてさらに高度化するためであり、同一内容の単なる反復とは本質的に異なるものである。但し、教育のやり方次第では指摘の危険性について、否定はできない。それ故に、ここで示した内容に基づいて教育を行うためには各専門職大学院において教員がカリキュラムの全体構成と自身の担当分野の位置付けを把握、理解していることが重要で、教員間の十分な意思疎通に基づいた運営が求められる。
6MOT教育のコア・カリキュラムができたことは評価できるが、MOT教育のアウトカムズが不明のように見える。「2.総合領域」を見るとMOT教育は単なる知識の獲得ではなく、実社会において創造的問題解決に取り組む力の習得を目指す、とある。この目標に対してどのようにその水準を定め、その水準の達成度をどのように評価するのか。またどのような基準で達成度を判断するのか。水準や達成度を具体的に示せるような目標が必要ではないか。(電機)企業等の取組む活動内容が多様であることに対応して、総合領域において取組む内容も多様である。そのために総合領域において達成すべき目標の水準およびその評価法を客観的、普遍的なものとして定めるためには、研究・開発すべき課題が多くあり、継続して検討する必要がある。このような理由から、現時点では総合領域の成果についてはそれが最低限満たすべき質的要件で規定している。規定された質的要件を満たしているものであっても、成果の評価は個々の企業等によって異なることも考えられる。企業等による評価が必要に応じて実施できるように成果については報告書としての提示を求めている。
7総合領域というと分かりにくいが、修了研究として「実践的な取り組み」を認めるというのは良いと思う。ただし、修了研究だけで産業界に必要とされる全ての実践的スキルを習得させることは不可能である。せいぜい一分野、一事例であろうが、いずれにせよ「実践する」課程を設けるのは大変重要である。(学識経験者A)
学んだものを実践する課程を設けることの意義は大きい。(化学)
修了研究だけで全ての実践的スキルを習得させることは不可能との指摘はその通りである。学生が課題に対して論理性やデータの信頼性の点で評価に耐えうる内容のものを成果として創出する取組みをしたことが重要と考える。総合領域は体系的な教育の成果が発揮される課程である。
8全体としては、構成も含めて良い出来栄えと思う。理想に近づけようとすると改善したいことは無数に生じる。在職中の社会人学生が多いMOT専門職大学院において、その時間的制約の中で、どれだけのものが可能かという点を今後も引き続き検討する必要がある。(総合電機)教育内容は社会、経済、産業構造、科学・技術などの進歩、変化に応じて改定していくことが必要と考えており、それらを時間的制約の中でどう実現していくかについては、指摘の通り継続して検討していかなければならない。内容を継続的に充実させていくことについては本文中に記したとおりである。

『MOTコアカリキュラム』について

2010年3月 MOT協議会は、MOT専門職大学院として行うべき教育を検討し、「MOT教育コア・カリキュラム(以下、コア・カリキュラム)」を定めた。コア・カリキュラムは日本におけるMOT教育展開の基盤として作成したものであり、各大学が編成するカリキュラムの参考となるよう、MOT専門職大学院において学ぶ全ての学生が習得すべきと考えられる内容が示されている。このコア・カリキュラムは技術経営系専門職大学院協議会(MOT協議会)加盟の10大学の意見を反映させ、産業界からの意見も取り入れて作成されたものであり、今後広く活用されることが望まれる。今後、さらにMOT教育の質の向上を図り社会の負託に応えていくためには「MOT専門職大学院修了生の到達度の保証」を目指すことが求められる。これを実現するためには教育内容の整備に止まらず、到達度の基準と客観的な評価法の確立など多くの課題に取組むことが必要となる。今回作成したコア・カリキュラムは「MOT専門職大学院修了生の到達度の保証」を目指した今後の取組みの基盤として位置付けられるものである。